もう一度読む、山本周五郎「樅ノ木は残った」
小説では冒頭、放蕩が過ぎ藩の財政をひっ迫させた藩主、伊達陸奥守綱宗に幕府からのけん責が伝えられるシーンから始まります。内容は、「逼塞(ひっそく)」、謹慎閉門です。国の将来を思う忠義の家臣が、藩主の不行状を幕府に訴え、元藩主を引退させ代替わりさせたのが、「伊達騒動」の顛末。先に申し上げた江戸時代、寛永11年(1671)の出来事です。
この話は江戸庶民の知るところとなり、歳月を経てお芝居の題材になり多くの狂言が生まれました。中でも重要な作品が、安永6年(1777年)大坂で上演された歌舞伎「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」です。
5月に拝見する「伊達の十役」もこのお芝居を踏襲しています。長編小説として描かれ、大河ドラマの原作にもなった「伊達騒動」。市川染五郎が10役を早替りで演じるという趣向だけでなく、ストーリーそのものに見ごたえがあるこのお芝居。ぜひ、小さな小さな旅5月にご参加ください!