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与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ

与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17263006.jpeg与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
作/瀬川如皐(せがわ じょこう)

「いやさお富、久しぶりだなぁ」のセリフで知られるお富と色男・与三郎の再会シーンがあまりにも有名な本作。実は、現在歌舞伎公演で出されるこの場面は、長い長いお話のほんの一部分に過ぎないのです。与三郎の「しがねえ恋の情けが仇・・・」ではじまる長セリフに、これまでの人生の浮き沈みを込めるのが役者のしどころですが、鎌倉での再会以前のシーンは舞台で上演されることがないため、今ひとつ観客が感情移入しにくくなっているのも事実です。

亡き中村勘三郎さんが新たな歌舞伎ファンの獲得を目指して渋谷Bunkamuraのシアターコクーンで始めた「コクーン歌舞伎」。今もふたりの息子、勘九郎・七之助兄弟によって上演が続けられ、初演の1994年以来、今年で16回目を迎えます。
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17321153.jpeg現行の歌舞伎公演は、名作から見どころの一部分を抜き出して、3つから4つの芝居を上演する「みどり狂言」と呼ばれる形式が一般的。作品の美味しいところだけをつまみ食いできるアラカルト形式は、ストーリーをよくご存知の方にはより楽しめる舞台と言えるでしょう。逆に前後の話が描かれないため、ストーリーを楽しみたい方には向いていません。お話を初めてご覧になる方にお勧めなのが、物語の筋を追いかけられる「通し狂言」です。「渋谷・コクーン歌舞伎」は初演時からこの通し狂言形式で上演され、毎回、ひとつの物語の起承転結が一回の公演で観られるようになっています。しかも昔からある古いお芝居の演出やセリフを磨き直して、現代の観客にもわかりやすい作品に仕立て上げての上演。これが人気で、現在まで上演が重ねられているのです。
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17340307.jpeg今回、コクーン歌舞伎で取り上げられるのが、「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)」です。与三郎の家は、とある大名家に仕えていました。そうです、実は与三郎は元武士の息子でした。その大名家が家宝「鶴の香炉」の紛失(歌舞伎では「ふんじつ」と読みます)が原因でお取り潰しに。浪人となった与三郎の家は、与三郎を跡取りのなかった江戸の小間物問屋「伊豆屋」の養子に出します。しかし、のちに養子先に実子が生まれてしまうのです。家督を実子に譲るため、与三郎はわざと放蕩に走るのでした。
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17364742.jpeg養子先の伊豆屋を勘当され、木更津の親類に預けられていた与三郎と、ヤクザの親分・赤間源左衛門(あかまげんざえもん)の妾で元深川芸者のお富が出逢います。やがて深い仲になる二人ですが、密会がバレ、運命の歯車が回り始めるのです。与三郎は顔や体を切り刻まれるリンチを受け、お富は海に身を投げます。夜釣りをしていた江戸の質屋「和泉屋」の大番頭・多左衛門(たざえもん)に、命を救われるお富。そして、多左衛門を頼り身を落ち着けたのが江戸湾を隔てた鎌倉の源氏店(げんじだな)でした。現在の中央区人形町あたりの玄冶店(げんやだな)がモデル。いわくのある人物がひっそりと住むのに好都合な、今で言う高級住宅街です。
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17380127.jpeg一方、ヤクザな生活を続けていた与三郎も鎌倉にいました。金ヅルをゆすっては、その日の稼ぎにするような毎日。この日も町のチンピラ「蝙蝠安(こうもりやす)」と源氏店の一人暮らしの女性を狙って押し入ったところ、なんとお富と再会することになるのです。そこにやってくるお富を囲っていた大番頭の多左衛門。お富は譲るが今の稼業からは足を洗えと与三郎を諭し、金を渡します。なんと、お富と多左衛門は、兄妹の関係だったのです。多左衛門は、海でお富の命を救ったときにそのことに気づき、江戸でお富を保護していたのでした。
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)全段のあらすじ_c0151691_17402810.jpeg実は、与三郎の実家が仕えていた大名家の取り潰しの原因となった「鶴の香炉」は、めぐりめぐって多左衛門が大番頭を勤める質屋「和泉屋」にあったのです。源氏店の後のシーンは、この「和泉屋」で「鶴の香炉」をめぐる話に発展。その後、与三郎は捕縛され、島流しに。そして、島抜けするという波乱万丈なストーリーが待っています。お富は小間物屋の観音久次(かんのんきゅうじ)と所帯を持ちますが、この観音久次は与三郎の実家の家来筋にあたる男で、夫婦を装いお富を守っていたのでした。

そして、再び再会するお富と与三郎。観音久次の血液に南蛮渡来の薬を混ぜて飲むと以前に受けた傷跡が見事に治る与三郎。家宝「鶴の香炉」も戻り、お家が再興。めでたしめでたし、というのが「与話情浮名横櫛」全段のあらすじです。さて、「切られの与三」として新作上演される今回の「コクーン歌舞伎」。どのようにこの長編が料理されるのか、今からとても楽しみです。


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by m_katsutadai | 2018-03-17 17:43 | @店長榎戸 | Comments(0)

和の生活提案型きものshopの日常と非日常!?


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